膀胱炎とは
排尿時痛、残尿感、頻尿、血尿、尿の混濁・・・といえば『膀胱炎』です。
何らかの原因で、オシッコが出る尿道のから『菌』が入り、膀胱内で菌が増殖し、膀胱を刺激します。
原因として、疲れ、睡眠不足、冷え、トイレの我慢、水分不足がありますが、性交渉が原因となることもあります。

膀胱炎の治療は?
膀胱炎の治療の基本は、『抗生剤(抗菌剤)』です。膀胱炎は、膀胱内で菌が増殖して症状が出るため、菌をやっつけるためには、殺菌作用のある『抗生剤』が必要です。
膀胱炎に『漢方薬』はどうなの?
膀胱炎の治療薬して販売されている『漢方薬』はたくさんあります。特に、『ボーコレン』『腎仙散』『ハルンケアベアベリー錠』などが、ドラックストアの目立ったところに陳列されています。
でも実は、漢方薬には殺菌作用はありません。そのため漢方薬を飲んでも、膀胱炎の原因である菌をやっつけることはできません・・・。
当院にも『市販の漢方薬を内服しても良くならなかった・・』と受診される方が、たくさんいらっしゃいます。では、なぜ『膀胱炎の治療薬』として漢方薬が売られているのか?

膀胱炎の漢方薬の効果✨
膀胱炎の漢方薬には殺菌作用はありませんが、以下の効果はあります。
① 抗炎症作用(膀胱内の炎症を軽快させる)
② 利尿作用(尿量を増やして、膀胱内の菌を洗い流す)
膀胱炎の漢方薬は、オシッコの量をできるだけ増やして膀胱内の菌を洗い流し、膀胱内の炎症による痛みや出血を改善する効果があります。この効果は、『抗生剤(抗菌剤)』にはありません。
膀胱炎の治療は、抗生剤?漢方薬?
膀胱炎の基本治療は、『抗生剤』ですが、『漢方薬』には炎症を改善する作用や尿量を増やす作用があるため、『漢方薬』だけで自覚症状が改善することもあります。
でも、膀胱内の菌が多いときや、炎症が強いときは、『漢方薬』だけは治療できません。

膀胱炎の『漢方薬』の使い方
① 膀胱炎症状のはじまり、初期対応として
② 膀胱炎の治療後(抗生剤内服後)、膀胱内炎症が改善しきれないとき
③ 膀胱炎のような症状で受診されても、尿がキレイだったとき(膀胱刺激症状のみ)
このような時は、『漢方薬』も大活躍です。殺菌作用のある『抗生剤』と、抗炎症作用・利尿作用のある『漢方薬』、ぞれぞれを知って治療することが大切です。当院でも、『猪苓湯』『清心蓮子飲』『五淋散』などを処方しております。
✨猪苓湯(ちょれいとう)
炎症を起こした膀胱の中の熱を取り、オシッコの量を増やして菌を洗い流します。また、止血作用もあるので、血尿にも有効です。
『猪苓』という生薬は、チョレマイタケの菌核を乾燥したものですが、『猪苓』は中国語で『猪(いのしし)のフン』という意味です。中国語の『猪(いのしし)』は日本の『豚』のことです。ちなみに日本では『オニノカナクソ』という別名があります。


✨清心蓮子飲(せいしんれんしいん)
膀胱の調子を整えて、元気にしてくれます。猪苓湯のように膀胱内の炎症をとり、尿量を増やして菌を洗い流します。さらに、トイレが気になってしまう気持ちを抑えてくれます。
①全身を元気にする作用、②膀胱炎の不調を改善する作用、③心を整える作用があり、一気に心と体と膀胱を整えくれます。

✨五淋散(ごりんさん)
①尿管結石による排尿症状、②疲労による排尿症状、③ストレスによる排尿症状、④尿のにごり、⑤血尿の、5つの排尿症状(淋証)を改善するということから、『五淋散』の名前がついてます。
膀胱の熱を取りながら、尿量をふやして菌を洗い流し、痛みにも効果があり、炎症で傷んだ膀胱粘膜の修復にも役立ちます。まさに膀胱炎マスターのような漢方薬です。ちなみに『ボーコレン』はこれです。

猪苓湯・清心蓮子飲・五淋散の比較表
猪苓湯 | 清心蓮子飲 | 五淋散 | |
膀胱の熱をとる🤒 | + | + | + |
尿量を増やして菌を押し出す | ++ | + | ++ |
止血作用 | + | ー | ー |
体を元気にする (免疫力を上げる) | ー | ++ | ー |
心を整える💓 | ー | + | ー |
膀胱粘膜を修復する | + | + | + |
膀胱の痛みをとる | + | + | ++ |
『ボーコレン』『腎仙散』『ハルンケアベアベリー錠』の比較
膀胱炎の漢方薬は、市販薬でもたくさん販売されています。保険診療ではない薬もありますので、ご紹介します。
✨ボーコレン
小林製薬から販売されてます。病院で処方される『五淋散』という薬の半分量です。膀胱炎の症状に幅広く効果があります。
炎症や痛みを抑え、尿量を増やして菌を洗い流す、また傷んだ膀胱の壁を修復する効果はあります。

✨腎仙散
摩耶堂製薬株式会社から販売されている、菌を弱らせる効果はある生薬である『ウワウルシ』が入ってます。『ウワウルシ』は保険診療の漢方薬の生薬には使用されておりませんが、ヨーロッパでは尿路を消毒するハーブとして使用されてきました。また腎仙散には、膀胱の炎症をとりつつ、尿量を増やして菌を押し流す作用もあります。

✨ハルンケアベアベリー錠
ハルンケアで有名な大鵬薬品工業株式会社から販売されています。こちらの商品の有効成分は『ウワウルシ』です。ツツジ科の植物である『クマコケモモ(熊苔桃)』の葉っぱが、ウワウルシ(生薬)です。また、クマコケモモは秋に赤い甘い実がなります。この赤い実を、クマさんが好んで食べるため、ウワウルシの英名はベアベリー・リーフ(クマが好きな実の葉っぱ)といいます。『ハルンケアベアベリー錠』のネーミングはいいですね。


このように、市販薬の漢方薬もなかなか面白い感じです。だた『ウワウルシ』にも抗生剤(抗菌薬)のような殺菌作用はないため、内服しても改善がない時は、早めの受診をおススメします。
ボーコレン・腎仙散・ハルンケアベアベリーの比較表
ボーコレン | 腎仙散 | ハルンケアベアベリー | |
菌を弱らせる | ー | + | + |
尿量を増やして菌を洗い流す | + | + | ー |
膀胱の炎症を取る | + | + | ー |
痛みを取る | + | + | ー |